2010/01/29

Ubuntu on iMac -- (2) どう動いたか

「導入まで」編 の続きです。


■ 仮想マシン統合

取り敢えずどのマシンにも、仮想マシン統合(と勝手に呼んでるけど、Parallels Tools、VMware Tools、Guest Addon の類)は入れました。

まず Parallels では画面サイズの変更がうまくいかないことがあります。窓を広げてもデスクトップが大きくならないのです。多くの場合、単にビデオに割り当てられたメモリが小さすぎる(3MBとかになっている!)だけなので、メモリの設定を増やせばいいはずです。このことに気付くのに少し遠回りをしました。Ubuntu だけでなく Fedora12 でも同じことが起こりました。

それから Ubuntu 8.04 を入れた時は、窓をドラッグしようとすると思い通りに動かないという不具合も経験しました。画面の上下の縁にスナップしたまま上下動ができなくなるというもので、上下に接してなければ問題ないのに接していると横(しかも左方向だけ)に動いてしまいます。これも、Ubuntu の最初の大量のアップデートを適用した後で(それが理由かどうかは分からないけど)正常にコントロールできるようになりました。

Fusion は、Unity にした窓にフォーカスできない状態になることがあります。明らかに何か錯誤(バグ?)があります。いったん Windowed すればいいかと思ったけど、直りませんでした。シャットダウンして戻ってきたら直ります。

しかしいつも思うのですが、Ubuntu はメニューバーに最初からターミナルのアイコンを置いておいてほしいと思います。ウェブブラウザと同じくらいに(少なくとも導入当初は)必要なものだと思うからです。


■ デスクトップ統合

仮想マシン統合の中でも、ストレージやクリップボードの共有以外の機能、 各ウィンドウの Mac デスクトップへの統合のことを、勝手に「デスクトップ統合」と呼びたいと思います。何か正式な一般名詞があるんでしょうか? Parallels の「Coherence/Crystal」、Fusion の「Unity」、VirtualBoxの「Seamless」です。仮想マシンソフト界において、ホストOSのデスクトップにゲストOSの窓が窓として表示される機能はかなり一般的になったけど、それはたぶんゲストが Windows の時だけで、Linuxとなると話は全然違います。

まとめると、次のような感じになります。

  • Parallels は Linux に関しては対応していないので論外(怒)

ということで Fusion と VirtualBox の比較ということになります。

  • Fusion には VMware Tools、VirtualBox には GuestAddons をインストールした
  • Fusion は Unity が機能して普通に使ってればスムーズに使える
  • Fusion は Mac のメニューバーに Windows の「スタート」に相当するボタンができる
  • Fusion は Unity の時にメニューバーの表示/非表示を切り替えられる
  • Fusion は Spaces の任意のデスクトップに任意の窓を移動・配置できる
  • Unity で動く各アプリは Mac のドックに個別のアプリとして表示される
  • Unity を windowed にした後で復帰したりした時にマウスなどでアプリが制御できないことがある
  • VirtualBox は GNOME のメニューバーが消えず(「広げる」を解除して小さくした)
  • VirtualBoxは Mac の Spaces で単独の窓だけを動かすことはできずデスクトップごと移動する
  • VirtualBox の Seamlessは、こうしてみるとSeamless というより Desktopless あるいは Wallpaperless

少なくとも Linux のアプリをシームレスに扱いたい時は、Fusion 一択、ということになりそうです。別に Windowed でいいということであれば、あとは用途との相談ということになるんでしょう。


■ ストリーミングの再生

俺が使うことを想定した2つのケースで試してみました。

  1. 家庭内LANで動かしている Windows PC の SHOUTcast の 320kbps mp3 ストリームを再生
  2. XM Radio Online の WMA 128kbps ストリームを再生

使ったのは totem と vlc。サウンドシステムは Ubuntu 9.10 の初期状態(Pulseaudio)。後からわけあって 8.04 LTS や 9.04 も試してみました。

結論から言うと、Pulseaudioがクソです。少なくともうちの環境では使い物になりません。vlc だと再生が途切れ途切れになるとか、totem で再生音にプツップツップツッというノイズが乗るとか。うちの環境(Core i7 w/ 8GB RAM)でダメということは、おそらく普通に Mac 上の仮想マシンで Ubuntu 9.10 を動かす時は Pulseaudio は使えないだろう、ってことだと思います。設定を変えれば問題が解決するのかもしれないけど、そもそも俺自身があまり必要性を感じていないし、絶対必要だという状況でなければとっとと外してしまって吉だと思います。だいたいこの Pulseaudio、リアルのマシン(Pentium4クラス)でもログオン時の音楽がまともに再生できなかったりするんですよね。なんでいつまで経っても直らないんでしょう。

で、検証した3つのプラットフォームの中で、一番耐性がなかったのは Parallels。ぶつ切りです。次にダメだったのが Fusion、サウンドが安定するのに30秒近くかかります。起動して最初に音を鳴らし始めてから30秒は使い物にならない。ストリーミングとかだけでなく CDDA もそうなんだから重症です。vlc より totem の方が安定して再生できるけど、その totem もプチプチノイズが入るから失格です。スムーズに再生できるという意味で一番マシだったのは VirtualBox でした。ただ VirtualBox も後で述べる理由で使い物にならないかもしれません。

その、VirtualBox の困った不具合というのが、「再生が遅く音のピッチが思い切り下がる」という信じられないもので、まれに正常なこともあるけど、だいたい障害が発生します。この現象、ググってみると Ubuntu の日本フォーラムにも質問が挙がっているのに回答ないまま2年が経過しているのを発見しました(https://forums.ubuntulinux.jp/viewtopic.php?id=5134)。

その書き込みの中に「同じ仮想化環境でも、Ubuntu8.04ではこの問題は起こりません」というのが書いてあったので(質問した人は9.04でこの現象を訴えていた)、試しに 8.04LTS をインストールしてみました。検証してみると全く問題なく正常に再生してくれます。プチプチノイズも乗りません。LTS なら当面のサポートは心配ないし別にメインで使うデスクトップでなければ 8.04 でも一向に困らないので、音の再生を重視するなら VirtualBox with 8.04 LTS が最善の選択肢ということになるでしょうか。

何だか後ろ向きだけど、逆に言うと Ubuntu 8.04 にして Pulseaudio を使わなければ、どの仮想マシンを使ってもあんまり変わらない、ということですね。


■ Wine の環境

で、用途(2)のために Wine をつかったらどうなるか、というのは、ちらっと試してみました。「Cross Over Mac 8 Standard」というのをDLして試用してみたんですが、どうもやっぱり Wine は Wine で、関係者がケアしてくれない対象外ソフトは、それなりの動作しかしません。試しに Winamp 5.33 というのを入れてみたんだけど、ウィンドウの位置が正しく制御されず、意図しない場所にヒョコヒョコ戻ったりします。これなら Parallels の Coherence/Crystal で動かした方が全然マシです。

これからどうなるかは分かりませんが、マシンパワーに余力があるなら仮想マシンの方がいいです。


※ このトピックに関しては、追々気付いたことを書いていきたいと思います。
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(Jan.29.2009)

Ubuntu on iMac -- (1) 導入まで

写真は、Mac のデスクトップに同居させたVLC(Mac)、totem & Gimp(Ubuntu on Fusion)、TVU player(WinXP on Parallels)など

新年1回目のポストということでご無沙汰になってしまいましたが、ずっと Ubuntu はいじっていたんです。正月に iMac なるものを買って、仮想マシンで Ubuntu をどう快適に動かすか、という課題に取り組んでいました。いままで Ubuntu の上で Windows も動かしていたのを、iMac の上で Ubuntu と Windows も動かす、という感じです。

■ 仮想マシン稼働は既定路線

iMac は買う前にかなり考えました。母屋が Mac になってしまうということは、メインが Mac になってしまうこと。必然的に Ubuntu とも疎遠になってしまうだろうと思ったわけです。でも、あの値段でこのパワーと広大なデスクトップが手に入ると思うと、ガマンできなかったのです。ある意味 Linux のデスクトップ環境とは対極にある MacOS を体験してみたいというのもありました。

ただ、仮想マシンを iMac の上で動かすというのは購入前からの既定路線でした。実際使いはじめて1カ月弱経ちましたが、少なくとも現時点では3つのプラットフォームのアプリをごっちゃにして使ってます。思ったほど、規模の大きなオープンソースソフトウェアの Mac 対応が進んでないのです。一番驚いたのは Gimp がネイティブではまだ experimental のレベル(実際にうちでは動作しませんでした)。OOo も「Neo Office」とかっていうのでないと、ちゃんとしたネイティブでは動いてくれません(10㌦ほどドネーションしました)。X11 の上で動かすのは面倒だし、イヤなのです。それなら、仮想マシンでほかの OS をシームレスで動かした方がいい。

主な仮想マシンソフト、VMware、VirtualBox に加えて Mac の世界ではこっちが主役、な感じの Parallels の3種類を試してみることにしました。厳密に言うと「試さざるを得なかった」。ユーザが多い Windows については各仮想マシンソフトとも最適化が進んでいるようで、
Parallelsの「Coherence/Crystal」、VMware の「Unity」、VirtualBox の「Seamless」という Mac のデスクトップとの統合もそれぞれ実装。特に Parallels は Mac に溶け込むと表現していいほどの高い次元での統合を実現しています。比して Linux に関しては、Windows への対応からするとかなり poor and unstable で、しかも各仮想マシンソフトの間で大きな差があるように思えます。そこんところを、俺的な用途を主眼としつつ比較し、ここに軽くまとめます。

ちなみに iMac に切り替えたのはメインのマシンだけで、ほかの3~4台のマシンでは Ubuntu や Windows が稼働したりしています。それから、ASCII の MacPeople 2月号で紹介されていたような「古い Mac で十分動かせる Ubuntu」のような使い方も考えていません。Windows もしかり。だから BootCamp でインストールなんて考えてないです。それなら既存のPCを使えばいいだけですから。


■ 稼働環境

iMac 27 inch Core i7 (late 2009) RAM 2GBx4
Mac OS 10.6.2

Parallels Desktop 5 for Mac Build 5.0.9308
VMware Fusion v3.0.1 (215242)
Sun VirtualBox v3.1.2 r56127


■ 購入・入手から導入まで

a) Parallels Desktop 5

まず Parallels を購入。本体購入時に特別優待版をソフマップで7680円でした。iMacを買った時のソフマップのポイントを消化する必要に迫られて買いました。正直、勝手知ったる VMware の Fusion 3 がすぐ隣に置いてあって迷ったけど、いままで試したことのないものをと思って、その一点だけで Parallels を選んだのでした。Parallels を日本で売っているラネクシーという会社は、ほかのMac用のソフトとセットで安く販売してたりもするんで、初期投資はもっと少なくなる可能性もあります。あと、日本版にこだわらなくてもDL販売の英語版でも日本語OSは普通に使えるみたいです。円高の今なら、その方がコストは抑えられると思います。それから、アップデートがすぐに日本版に反映されないみたいなんで、本家アップデートがすぐに欲しい人は、英語版を選ぶのもありだと思います。

しかしですね…Windows 以外では Coherence が機能しないことを確認してがっかりしました。立ち読みした雑誌でちらっと読んだ記憶があったんだけど、Windows ゲストの出来がすごくいいだけに(Windows を使うなら絶対 Parallels がお勧め)、これは本当に残念です。次のバージョンとかで対応したりするのかな…そしたらまた金を取られるのかな…そしたら買わないかも、と思っちゃう。でも Parallels が Windows 並みの統合を求めるなら、未来永劫 Linux には手を出さないでしょうね。それくらい Windows については高次元の統合が実現しています。ちょっと比較になりません。

ついでにいうと、お任せインストールした Windows(XP SP3)はキーマッピングやらユーザ言語やらがメチャクチャ。キーボードもいきなり英語101/102がインストールされてるし、仮想マシンの設定を en_US 用か何かに決めうちしてるみたいですね。これは「日本版」の有料ソフトとしては失格です。少なくとも現時点でお任せインストールは、メッセージ類が日本語化してるだけ。日本語版ではむしろ危険だから、ちゃんと対話インストールを選択した方がいいです。そうすれば何の問題も起こりません。一応、FAQで日本語環境に再設定する方法が紹介されているけど、IEなんかのステータスバーの一部(インターネット・セキュリティに関するステータスの表記)に、ちょっとやそっとでは直せない不適切なフォント設定があって、文字が化けます。DBCSに対応していないフォントでDBCS文字列を表示しているようです。直せば直るはずだけど、ググっても糸口が見つからないし、レジストリ覗いても簡単には見つかりそうもなかったので諦めて、対話式で再インストールしました。その方が早くて安全。これはSP3のほか、SP2でも試したけど同じ結果でした。

Linux でもお任せインストールできるけど、こちらもキーボード、ロケール、タイムゾーンの類がメチャクチャだから任せない方がいいのは同じこと。

インストールに使う光学ディスクはISOイメージ(のまま)にしておくと、時間が節約できていいです。Ubuntu もリアルCDではなくISOイメージのままインストールに使いました。Windows もわざわざイメージを作りました。作る時間がもったいないですが「対話」の時間は短くなるし、やり直したいと思った時も気軽にできます。

あ、Mac は初期インストールのソフトだけでISOイメージが簡単に作れました。すげー。


b) VMware Fusion 3

次に、Unity を求めてFusion を Smith-Micro Software というところでオンラインで購入。何か不思議な割引制度があって(ここがとっても不安なんだけど…)、アンケートに答えると割引のクーポンコードがメールで送られてきて、俺の場合は25%オフでした。決済通貨が円とドルと選べたけど、俺はドルを選んで$79.99の25%オフ。どういうレートになるか分からないけど、1㌦92円とすると5519円、すごく譲って97円としても5819円です。こないだ来たカード明細で、ドル建ての明細を見るとレートは90.2円くらいだったから、ホントお得。おそらく国内のほかのどの優待より安いんじゃないかな。詳しくは、こちらのブログを見てみてください(http://rapidweaverfan.net/coupon/vmwarefusion/)。時期によっては本当にもっと安いらしいですよ。

俺はこれに、2年間DL権を付けたのでトータルで$66.50でした。これをまぁ、CD-ROMに焼く手間とかもあるといえばあるけれど、まだ焼いてません。NASか何かに退避しておけば十分でしょ。2年の間にはバージョンも上がって、権利があっても落とし直す必要がないんじゃないかと思いまして。だったらその権利も買わなきゃよかったかな。ま、日本で買う優待版よりは安いからいいことにしよう。それから、インストールしたらちゃんと日本版としてインストールされました。

ちなみにアプストで同時購入価格は7980円。あと、アメリカ本家の VMware のウェブストアだと自動的に10%オフになる特典があるそうで、$70ちょっとになります。

Fusion もオートで必要な設定をしてくれるモードがあるけど(おそらくバージョンによりけり)、インストールは普通に対話式でやった気がします(覚えていない)。どういう具合かよく分からないんですが、Ubuntu 9.10を入れると、ログイン時のキーボードが毎回「USA」になってて、いちいち日本に切り替えなきゃいけないのがむちゃくちゃ面倒でした。ただこれも、いつの間にか起動時に「日本」になるようになってたんで、不思議です。


c) VirtualBox

でもって、最後に入手したのが VirtualBox でして、これはもう普通にダウンロードするだけ。無料だし。ただ、Linux ホストで使っててタイミングというか正確なクロックの刻みが必要な用途、たとえば音楽の再生とかには向いてない、という印象だったんで、正直あまり重視していませんでした。というか、そもそもまず最初にこの無料の VirtualBox を試してみるべきだったけど、全く思い出さなくて…そもそもソフマップのポイントが消化できないし(当たり前だけど)思いつかなかったんです。でもインストールしてみました。


以下「どう動いたか」編に続きます
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(Jan.29.2010)

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